「ドイツ=正確」は昔、欧州鉄道満足度ランキング 「遅れる」イメージのイタリアやチェコが躍進
自分がよく利用する鉄道会社をさまざまな側面から点数を付けて評価した場合、どのくらいのスコアを獲得して、全体で何番目になるのだろうか?その順位に興味を持つ人は多いだろう
ヨーロッパ地域における運輸および環境分野の非政府団体、欧州運輸・環境連盟(European Federation for Transport and Environment、T&E)は、チケットの価格や定時性・信頼性、予約のしやすさなど8つの指標について、欧州の鉄道会社に点数を付けてランキングするという調査を行った。その結果は――。。
「遅れる」イメージのイタリアが大健闘「遅れる」イメージのイタリアが大健闘
旧国鉄系から新規参入の民間会社まで計27社を対象にした調査の結果、堂々の1位を獲得したのはイタリアのトレニタリア。日本ではイタリアの鉄道というと「遅れ」をイメージする人が多いであろう中、ちょっと意外な結果となった。2位はスイス、次いで3位はチェコの民間会社レギオジェットで、4位オーストリア鉄道、5位フランス国鉄、6位チェコ鉄道と続いた。
一方で最も悪いと評価されたのは、これまた意外だがイギリスと欧州大陸を結ぶ高速列車「ユーロスター」。フランス国鉄の格安高速列車「Ouigo」(ウイゴ)や、オランダ鉄道もワースト5に名を連ねている。いったいどんな基準や方法で各鉄道会社を評価したのだろうか。
T&Eは今回の調査について、「鉄道システムはゼロ・エミッションを進める世の中で、最も重要な礎となる存在の1つ」としたうえで、「ヨーロッパの多くの鉄道会社は期待されたサービスレベルを下回っており、EUの調査によれば鉄道の定時性や信頼性に満足している人は全体の59%にすぎない」と、現状の鉄道が抱える課題を指摘する。
そして、「そのために改善を推進し、国家レベルの政策変更に情報を提供するため、最も包括的なヨーロッパの鉄道事業者サービスランキングを作成するに至った」と説明している。
分析に当たっては、以下の8つの項目に沿って評価し、それぞれ重要度に応じて点数の比率を変えている。これら8項目をそれぞれ10点満点で評価し、それに基づいて総合評価のスコアを出している。
- 1:全体的なチケット価格(25%)
- 2:各種特別割引運賃の設定(15%)
- 3:信頼性・定時性(15%)
- 4:予約のしやすさ(15%)
- 5:遅延や運休時の補償に対する方針(10%)
- 6:乗車時の体験※車内でのサービス内容など(10%)
- 7:夜行列車の運行(5%)
- 8:自転車輸送に関する方針(5%)
(*カッコ内の%は総合評価の際の配分を示す)
7・8の2項目は、一部の乗客に対する特定のサービスについて評価するものである。国や地域、運行区間によっては夜行列車の運行が難しいケースもあり、実際に最下位となったユーロスターは運行が不可能なため、得点は0点となる。自転車積載も同様だ。評価に含めるべき項目ではないと感じるかもしれないが、夜間移動による効率性や、自転車利用による二酸化炭素排出抑制への期待という視点で見た場合、この項目は含まれるべきと考えてのものだろう。
ライバル登場で大幅改善のイタリア
実際の採点を比較してみよう。
1位となったトレニタリアは、総合7.7点(10点満点)を得た。自転車輸送以外はいずれも高い得点を獲得しており、信頼性・定時性の項目でも6.6点と平均以上を獲得している。
【表】欧州鉄道のサービスランキング、1位に輝いたのはイタリアのトレニタリア。ではそのほかは?全27社のランキングを一覧表で一気にチェック
コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、信頼性は消費者が交通手段を選択する要素において2番目に重要な項目という。ちなみに最も重要な要素は所要時間と移動の快適さであるという。
イタリアの鉄道といえば遅延の代名詞のように言われてきたが、この10年ほどの間に行われたインフラの改良工事や、適切なダイヤ作成により大きく改善された点は評価できる。ただし、最近はまた遅延の回数が増えたという現地報道もあり、気を緩めることなく運行を行ってほしいものだ。
割引運賃設定ではライバルの民間高速列車「イタロ」とともに10点満点を獲得。ライバル同士がしのぎを削ることで、より利用者の視点に立った運賃やサービスが期待できるという証しでもあろう。
チェコの新参企業は車内サービス高評価
2位のスイス鉄道は総合7.4点で、遅延の際の補償と、夜行列車について減点されている。しかし、その他の項目ではいずれも高い点数を獲得した。
同じく7.4点だったチェコの民間会社レギオジェットは、低廉な価格とわかりやすい予約サイト、車内でのサービス充実度などで大きく得点を伸ばした。特筆すべき点は、上位10社の大半が旧国鉄系の会社であるなか、イタリアのイタロ(8位)とともにランクインしたことだ。
日本も同様かもしれないが、ヨーロッパの鉄道予約システムは航空会社と比較して使い勝手が劣っているとされる。オランダ拠点の金融機関INGの調査によると、鉄道は航空と比べ、途中で予約をあきらめてウェブサイトから離れる人が10倍も多いという結果が出ている。予約がしやすいのは鉄道利用を拡大するうえで重要な点だ。
また、レギオジェットは旧国鉄系のチェコ鉄道と比較して価格が全般的に安いにもかかわらず、車内では客室乗務員がこまめに巡回して飲み物を提供するなど、この両面で高い評価を獲得しており、リピーターも非常に多い。一方、ライバルのチェコ鉄道も総合6.5点で6位と健闘。競合他社の存在がプラスに作用していることがうかがえる。
「鉄道大国」フランスとドイツで明暗
では、ヨーロッパの鉄道大国であるフランスとドイツはどうか。
フランス国鉄は、総合6.6点の5位と健闘している。旅の快適性で10点満点を獲得しており、高速列車TGVによる所要時間の短縮といった要素が得点を押し上げたようだ。政府の後押しがあったとはいえ、フランスでは国内航空路線の多くが撤退して都市間輸送の主役はTGVが独占している状況で、高得点も納得できる。
ただし、フランス国鉄の格安高速列車ブランドであるOuigoは総合5.2点であった。全体的なチケット価格では8.6点という高得点を獲得しているにもかかわらず、特別割引運賃は1.3点という低評価である。これは低廉な運賃設定の一方、荷物の個数やWi-Fi使用料など細かい追加料金が設けられており、それらを課金するたびに運賃が跳ね上がっていくというシステムのわかりにくさなどが評価を大幅に落とした要因と考えられる。
ドイツ鉄道は、総合5.9点で16位と振るわなかった。とくに信頼性・定時性で2.5点という非常に低い評価を得てしまったのが痛手だ。ドイツ鉄道の遅延については過去の記事でも指摘したが、老朽化したインフラが、列車本数の増加した現代の鉄道運行には完全にミスマッチとなっており、もはやドイツ鉄道の力だけで対処できない状況に陥っているとも言える。
最下位「ユーロスター」なぜ低評価?
そして「ユーロスター」は総合4.9点という最低評価を獲得してしまった。その主な理由は非常に高額な運賃設定で、2.1点という低評価だ。
英仏間を移動する人の大半は航空機でなくユーロスターを利用しており、ライバルとなる鉄道会社もないため寡占状態となっている。それが強気な運賃設定へとつながり、利用を阻害する要因となっていると批判されている。
マッキンゼーの調査では、49%の回答者が交通手段の選択の要因に価格を挙げており、Europe on Railの調査では73%の回答者が同じルートでは航空機より鉄道のほうが安いはずだと考えている、という結果が出ている。この調査において最も重要視している項目での低評価がワースト1位の原因となってしまった。
運賃に関する評価がユーロスターより低かったのは、1点だったイギリスのグレートウェスタン鉄道のみであった。
この調査は、あくまで独自の算出方法によってランク付けされたもので、この順位がそのまま会社の評価に直結するものでもなければ、利用客の評価とぴったり一致するものでもない。しかし鉄道会社側からすれば、これを一つの評価として、自分たちの足りない部分の改善に結び付けることができれば、会社にとっても利用客にとっても、より良い鉄道運営を期待することができるだろう。もし日本で同じ調査をした場合、どのような結果が出るだろうか。